2018座間味村議選取材報告

9月9日は沖縄県内で26の市町村議会議員選挙と2村の村長選挙が執り行われた。これを沖縄統一地方選挙と呼ぶ。

 

間近に控えた沖縄県知事選挙や宜野湾・那覇市長選挙の前哨戦と位置付けて戦う陣営も多い一方、各地域独自の課題に対してどのような政策を打ち出すかが各候補に問われる場でもある。

 

その中でも今回は、那覇の港から高速船で50分の距離にある離島、座間味村の選挙を取材した。

 

座間味村は人口1000人足らずで、座間味、阿嘉、慶留間の3つの有人島から構成されている。

村議会議員の定数は6、今回は8人が立候補した。

 

船着場で待ってくれていた友人と話しながら港を歩いていると、友人が観光客向けの無人島への渡し船を指差して「あのお兄さんも今度の選挙に出ているんだよ」と一言。都市の選挙と違い、選挙期間中も候補者は日常の仕事を続けいていることを、早速思い知らされた。

 

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<<候補者の一人が働いているマリンタクシー>>

 

 選挙といっても、選挙カーや街頭演説があるわけではなく、村役場や公民館に公設の掲示板が設置されている以外は、9月上旬はまだまだ海に入りに来ている観光客の数も多く、島に選挙の雰囲気は特に感じ取ることはできない。

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<<選挙中も平和な日常が続く>>

 

 取材に来たものの、きっかけが掴めず途方にくれていたところ、友人に紹介を受けた40代の現職村議会議員(この選挙には立候補せず引退)の方にお話を聞くことができた。

 

−「座間味、阿嘉、慶留間の3島それぞれの思惑があると思うのですが、各島からバランスよく議員が選ばれているのですか?」

現職村議 必ずしもそういうわけではないです。島の代表は各地区の区長が担っていて、村議となると村の代表だからです。確かに阿嘉、慶留間は橋で繋がっていて、座間味島とは利害が一致しないことも多々ありますが。

 

−「都市部と違ってのぼりや街頭演説は見かけませんが、選挙活動はどのように行われているのですか?」

現職村議 私が1期目の時は街頭演説をやりましたが、ほとんどそういった選挙活動はやらないですね。地域を回って名刺を置いてもらったりするくらいで。ほとんどの人が親戚か知り合いなので、その中で票を集めるのが一般的なやり方です。

 

-「この村にはどんな産業に従事している人が多いのですか?」

現職村議 人口の約10%が観光業に従事しています。外部から人が来ることを嫌がる人もいますが、そのおかげで定期船がフェリー、高速船合わせて一日3往復したり、漁業にしても加工して観光客の皆さんに消費してもらうことで収入をあげられるなど、いろいろな良い影響を生み出しています。また、30%以上がIターンで移住して来た人なので、従来から住んでいた住民と分けて考えたい人とそうでない人とで考え方の違いが出てくることも多いですね。

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<<古座間味ビーチは村が管理している>>

 

−「小さな村の議会ならではの苦労もあるのではないでしょうか。」

現職村議 台風で議会がひらけなかったある日、阿嘉島に住んでいる議長がスーツをビニール袋に入れ、頭に乗せて小さな漁船に乗って、議会の休会を宣言しに来たことがあったそうです。議会制民主主義を守るのも命がけですね。」

 

自然との戦いも壮絶なものがあるようで、日帰りの滞在だったが、通り雨で掲示板のポスターがあっという間に流されてしまった様子も目撃した。(晴れたらすぐに役場の職員さんが復旧していた)

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<<ポスターが流されてしまった掲示板>>

 

 大きな政党や組合、支持組織などを巻き込んで大規模に展開する選挙と異なり、有権者も立候補者も顔の見える距離にいるコミュニティでの選挙では、その度にギスギスしてしまうこともあるようだが、それぞれの考え方を改めて整理して意見を交わし合う機会として機能している様子もうかがい知ることができた。