連続インタビュー企画『#だから私は選挙に行かない』:ケース4〜Megumiさんの場合
#だから私は選挙に行かない
>前口上
>ケース1
>ケース2
>ケース3
ケース4
20代前半/女性/中部
Megumiさん(仮名)
ー 今回選挙に行かなかった理由を教えてください。
Megumiさん:2つあります。1番の大きな理由は面倒だったからです。私は住民票を移しておらず、進学先から実家までは5時間以上かかるので、投票は大変だと判断しました。また不在者投票に関しては主な手続きが郵送なので煩わしい*1と思い、しませんでした。
2つ目の理由は両親が選挙に行かないことです。両親は40代後半ですが全く政治に興味がなく、テレビで選挙関連の放送があるとチャンネルを変えます。なので私はSNSが普及したり、友達との間で選挙が話題にあがったりするまで選挙に馴染みがなく、どこか遠い国の出来事くらいの感覚でした。
ー 選挙があったこと自体を知ったのはいつ頃ですか?
Megumiさん:詳しくは覚えてませんが期日前投票をしている頃には知っていました。
ー 自分が住んでいる選挙区から立候補していた人の政策をチェックしましたか?
Megumiさん:いいえ
ー 自分の生活と政治が関係している、という感覚(例えば税金や今後の就職など)を覚えることはなかったですか?
Megumiさん:消費税に関しては生活とリンクしている実感がありましたが、それ以外はピンとこなかったです。
ー 選挙に行かなかったことを自分自身でどうとらえていますか?
Megumiさん:行かなかったことに関しては後ろめたい気持ちはありつつも住民票を移さない限り、次回も行かないと思います。
ー 後ろめたく思うのはなぜでしょう
Megumiさん:政権が変わらなかったこと、(私は自民党の政策に反対だったので)そして、友達に選挙に行かなかったと言ったら引かれたのが後ろめたく思う理由です。だけど、住民票に関する手続きを話すと、今回選挙に行った友達も行かないだろうと話していたので、罪悪感が薄れたという気持ちもあります。
ですので、「どちらかといえば行きたかったし行くべきだったが仕方ない。住民票を移し次第行く」というのが私の本音です。
〜ケース4 以上
写真は本文とは関係ない、 いつかの深夜の買い物。
*1:不在者投票に関しては住民票のある市区町村に確認をしてみてください。渋谷区の場合https://www.city.shibuya.tokyo.jp/kusei/senkyo/20190721sangiin.html#FUZAI
連続インタビュー企画『#だから私は選挙に行かない』:ケース3〜Takashiさんの場合
#だから私は選挙に行かない
>前口上
>ケース1
>ケース2
ケース3
30代前半/男性/近畿
Takashiさん(仮名)
ー 選挙権を得てから今までどれくらいの割合で投票に行っていますか?
Takashiさん:0です!一度も行った事はございません。
ー 毎回、行くことを検討しつつも行かないことに決めたのですか?それとも行かないことに決めていたのですか?
Takashiさん:前回までは関心はあるものの行く気がなく、今回は行こうとかなり思ったのに結局行けませんでした。しかし、行こうと本当に思えば行けたはずで、自分の中のあとひと押しが足りませんでした。
ー 今回は行こうと思ったのはなぜですか?
Takashiさん:いくつか理由がございまして、
・自分が思う、しっかり勉強している真面目に考えている友人が「どこに入れます?」と聞いてこられた事で、行かないことに後ろめたさを感じていた自分も調べて行こうかと考えたこと。
・ツイッターなどで知人、友人、知らない方まで、政権批判や、意見を言いあって対立をしているのを見て、当事者感のようなものが芽生えてきたこと。
・韓国が嫌いになり(情報に振り回されているかもしれない自覚はある)政治にさらに関心を持ったこと、です。
ー 友人の方やインターネットの情報で意識を持つようになった、ということですね。
ご自身の普段の生活が政治とつながっている、という感覚はあまりないですか?
Takashiさん:実は、自分の普段の生活が政治と繋がっている実感が、ほぼ全くありません。
税金は上がるのですが、それでも「大いに不満だが仕方ない流れか。みんな一緒にして上がるんだし、仕方ない」のような感覚を持っているようです。
ー 今回、投票に行くかどうかを検討するにあたって、各候補者の演説を聞きましたか?また、候補者の政策をチェックしましたか?
Takashiさん:いえ、気になったといいながらも、チェックしなかったのです。
地域の方の演説や政策をチェックしませんでした。
理由は、ツイッターやライブドアニュースなどでよく見る目立つ人にのみ注目して、地元の人が所詮末端じゃないかのような感覚を持ってしまっているのも理由になりそうです。
そんな末端の人を調べるより、目立つ人を見て、憤ったり、うわっと思ったりする方が刺激的だから、地域の人を調べるのが後になったのだと思います。
実際は地域の政治家の意見を調べていないので、もはや調べ方すら調べなかったとも言えます。
〜ケース3 以上
写真は本文とは関係ない、今日新宿で見かけたスローガン
連続インタビュー企画『#だから私は選挙に行かない』:ケース2〜Sakikoさんの場合
#だから私は選挙に行かない
>前口上
>ケース1
ケース2
20代後半/女性/東海
Sakikoさん(仮名)
ー 選挙権を得てから今までどれくらいの割合で投票に行っていますか?
Sakikoさん:今まで1回も行っていません。
ー 今回選挙があったことはいつ頃知りましたか?
Sakikoさん:投票日の2日前にハガキを見て知りました
ー そもそも選挙に行こうという発想すらなかった感じですか?
家族で選挙の話をしたりすることもなかったですか?
Sakikoさん:ハガキを見て行ってみようかなーという思いもよぎりましたが、過激な選挙活動やその支持者様達の過激な発言ばかりがニュースやSNSで目にいてうんざりしていたので、行きませんでした。
ー 過激な発言というと具体的にどんなものが気になりましたか?
Sakikoさん:具体的·····といわれると難しいですが
阿部政権への批判的意見を長々と書き連ねたり·····
同調しない人たちを遠回しに批難したり·····
わたしには誰が悪いとか
悪くないとかわかりませんし、
表面的には悪く見えても一般人にはわからないような複雑な事情が絡んでいるのかも·····
とか考えてしまうと·····
そんなに過激にならなくても·····
と思ってしまいます。
ー 批判そのものよりも、その過激さが選挙から遠ざけた、というわけですね。
普段生活していて政治のことを考える機会はないですか?
Sakikoさん:政治のことは演説等を街で見かけた時に少し考えることもあります。
若い世代が選挙に行けばいつもとは違う政党が当選し、良くも悪くも新しい政治の流れになるのも面白いなと思います。
ー 家族や友人と選挙に行ったとか行かなかったという話はしなかったですか??
Sakikoさん:創価学会の友人からは電話は来ますが💧家族ではそのような話をすることはないです。
ー 選挙に行かなかったことを今はどうとらえていますか?「後悔している」「手続きが大変なのだから仕方ない」など、色々な気持ちをお持ちかと思います。次の選挙をどうするかなども含めて聞かせてください。
Sakikoさん:行こうという気持ちもわかなかったので後悔もないです。
しかし今回の選挙ですごく面白いなと思った事がありました。
いま若い世代に流行しているタピオカのお店の一部が投票しましたっていう半券?とかなのでしょうか。を持ってきたら割引します!という取り組みを行っていて、これなら若い世代の人達も投票行くかー!と興味を持つキッカケになるのではないかなーと感心しました。
参考
⭐️選挙に行ったらタピスタ半額キャンペーン⭐️
— Tapista❁公式 (@Tapista_JP) July 17, 2019
7月21日(日)は参議院選挙です。「Tapista」は、選挙に行く方を応援します。投票日当日、投票済証明書をご提示いただいたお客様は「全品半額」にいたします!
タピオカの一粒の重みと、あなたが持つ一票の重みは、どちらも未来を変える大切なものです。 pic.twitter.com/yrXyblIIpS
このような取り組みがもっと多方面で行われれば、せっかく投票するのだから
色々調べて投票してみようと今後私も思うと思います。
それに、若い世代方たちが特に何も考えず適当に投票しても良かれ悪かれいつもと違う選挙の流れになったり、良くも悪くも状況が変わったりすれば、それをみてもっと考えて調べて投票しようみたいな流れが出来たらいいなと思いました。
ー 選挙割はTapistaの他に、ラーメンの一風堂が結構前からやってますね。ああいった取り組みが若い世代に刺さっていることや感心がなかった方がだんだんと興味を持っていく様子がリアルに伝わりました。どうもありがとうございます。
Sakikoさん:お話聞いていただきありがとうございます。このような機会があったため先程友達会った時、選挙の話をしてきました。次の投票は行ってみようと思いました。
〜ケース2 以上
写真は本文とは関係ない半額の寿司
連続インタビュー企画『#だから私は選挙に行かない』:ケース1〜Kaoriさんの場合
#だから私は選挙に行かない
ケース1
30代前半/女性/近畿
Kaoriさん(仮名)
ー 選挙権を得てから今までどれくらいの割合で投票に行っていますか?
Kaoriさん:選挙権を得てから5年程前までは選挙があるたびに毎回行っていました。
5年程前から今まで1回も行っていません。
ー 行かなくなったきっかけは?
Kaoriさん:私はうつ病患者で、精神障害者です。
20歳で発症したので選挙権を得た時と同時期にはもう病気でした。
5年程前から行かなくなったのは、投票所にいる事務員の方の視線が気になったり、文字が上手く書けなかったらどうしようという不安、投票手順を間違えたらどうしようという不安が強くなってしまい、投票に行く事が困難になりました。
また、病気のせいで体力も無いので投票所に歩いて行くのが辛いというのも理由の一つです。
ー 体や気持ちの都合で行けないけれど、投票に行きたい、という気持ちは持っているのですか?
Kaoriさん:この5年程は「どうせ選挙に行けないのだから」と政治に無関心でした。ニュースを見ると精神的に辛いことも多いので、余計に政治のことを考えなくなっていました。
けれど、前回の選挙ではツイッターを通して友人達の間でも選挙の話題が多く出ていて、私も選挙権があるなら選挙に行ったほうがいい、行きたいと強く思っていました。
でも結局投票には行けなかったので、情けない気持ちになりました。
ー 今回の選挙にあたってご自身の選挙区の候補者や比例の候補者の情報収集はしましたか?
Kaoriさん:いえ、実は選挙に行きたいとは思ったものの、どうせ行けないのだからとなかばふてくされてほとんど情報収集はしていませんでした。
あと、これはお恥ずかしい話なんですが、私はいじめられて中学生の時不登校だったので、公民の勉強をしていません。実は参議院と衆議院の違いもわかっていません。政治に関心が無いわけではないのですが、よくわからない事が多いんです。
なので、今回の選挙をきっかけに、政治のことを勉強しようと思い、中学生向けの公民の参考書を買いました。
ー 知りたい、という思いと体がついてかないからどうせ、という思いのはざまにいたんですね。
ツイッターで友人の方々の話はどんな議論を交わしていたのですか?
Kaoriさん:そうですね、後輩の女性が特に今の政治に危機感を持って、選挙に関するネットの記事をツイートで紹介したりしてくれていました。話題に上がるのは年金や子育てに対する政策が多かったように思います。
ー 政治と自分自身の生活が連続している、あるいは関わりがある、と実感することはありますか?
Kaoriさん:はい。やはり私たちが実際に年金をもらう年齢になった時にいくらもらえるのだろうという不安があったり、子供を授かった場合にどのようなサポートが欲しいだろうと考えることがあるので、私たちの生活に政治が関わりがあるという実感はあると思います。
ー 差し支えなければ教えていただきたいのですが、今はお仕事なさってるのですか?
Kaoriさん:私は既婚で、仕事はしていません。夫の収入と、私の障害年金で生活しています。
ー ご家族がいらっしゃるからこそ、より政治のことを考えるきっかけが増えたのでしょうか。
Kaoriさん:そうかもしれません。夫とも誰に投票するかという話も少ししていました。
ー 逆にいうと、配偶者の方とも政治的な議論を時間をとってすることはあまりなかったのですね。
Kaoriさん:そうですね。夫からはそういう話をふられることもあったのですが、私が情報収集していなかったため話がはずむこともなかったです。
〜ケース1 以上
写真は本文とは関係ないはたらくくるまとはたらくひと
連続インタビュー企画『#だから私は選挙に行かない』:前口上
選挙が近づくと、右からも左からも「選挙に行こう」の呼びかけが溢れる。
行った方がいいんだろうけど、行ったら自分にどんなメリットがあるのかよくわからず、「絶対正義」的な呼びかけに反論できずに選挙カーの騒音をやり過ごしてニュースを見ると世の中の半分くらいの人が投票に行ってなかったりする。
大人はだいたいウソつきだし、みんなそれなりに適当に生きてるんだな、なんてことを思ったりするきっかけに選挙がなったりもする。
「選挙に行くべき理由」は明推協も、ファッションモデルも、ちょっとオシャレな雑誌もみんな言ってるけど、51.2%(こないだの参院選の投票率は48.8%)に登る「選挙に行かない理由」がおおっぴらに語られることはほとんどない。
政治や選挙のことなんか考えずに幸せに暮らせた方が、与党野党で議論してる日々より毎日が楽しいかもしれない。幸せな生活のヒントが「選挙に行かない理由」に潜んでる可能性だって否定できない。
あるいは、本気で投票率をあげて、誰もが意思表示をする正当な民主主義社会を築きあげることを目指すにしても、「選挙に行かない理由」を聞かずに、無関心層をひっくり返すことはできないはずだ。
大風呂敷を広げたものの、本当のところは「選挙ライター」を名乗って著書まで出して政治の近くでうろうろしていると、51.2%の視点からどうしても遠くなってしまうので、個人的な好奇心からTwitterで以下のような呼びかけをした。
【募集】選挙に行かなかった人
— 宮原ジェフリーいちろう🍠 (@ichiro_jeffrey) August 17, 2019
日本の投票権をお持ちの方で、先日の参議院議員選挙を棄権した方、いらっしゃいましたらぜひお話を聞かせてください。対面でもメッセージのやりとりでも構いません。薄謝進呈します。(本当に薄謝ですが)
ありがたいことに、呼びかけたその日のうちに複数の方から協力の申し出をもらい、主にダイレクトメッセージを通じでインタビューをした。
素直に語っていただいた思いの丈は、きっと政治の向き合い方を考え直す一助になる力を持っているはずだ。
ということで、前提が長くなってしまったのでこの記事のコロン以下を「ケース1」から「前口上」に変更していったんここまで。
ケース1に続く。
文字ばかりだと寒々しいので阿佐ヶ谷の飲み屋で出会った箸置きの写真をつけておきます。
2018座間味村議選取材報告
9月9日は沖縄県内で26の市町村議会議員選挙と2村の村長選挙が執り行われた。これを沖縄統一地方選挙と呼ぶ。
間近に控えた沖縄県知事選挙や宜野湾・那覇の市長選挙の前哨戦と位置付けて戦う陣営も多い一方、各地域独自の課題に対してどのような政策を打ち出すかが各候補に問われる場でもある。
その中でも今回は、那覇の港から高速船で50分の距離にある離島、座間味村の選挙を取材した。
座間味村は人口1000人足らずで、座間味、阿嘉、慶留間の3つの有人島から構成されている。
村議会議員の定数は6、今回は8人が立候補した。
船着場で待ってくれていた友人と話しながら港を歩いていると、友人が観光客向けの無人島への渡し船を指差して「あのお兄さんも今度の選挙に出ているんだよ」と一言。都市の選挙と違い、選挙期間中も候補者は日常の仕事を続けいていることを、早速思い知らされた。
<<候補者の一人が働いているマリンタクシー>>
選挙といっても、選挙カーや街頭演説があるわけではなく、村役場や公民館に公設の掲示板が設置されている以外は、9月上旬はまだまだ海に入りに来ている観光客の数も多く、島に選挙の雰囲気は特に感じ取ることはできない。
<<選挙中も平和な日常が続く>>
取材に来たものの、きっかけが掴めず途方にくれていたところ、友人に紹介を受けた40代の現職村議会議員(この選挙には立候補せず引退)の方にお話を聞くことができた。
−「座間味、阿嘉、慶留間の3島それぞれの思惑があると思うのですが、各島からバランスよく議員が選ばれているのですか?」
現職村議 必ずしもそういうわけではないです。島の代表は各地区の区長が担っていて、村議となると村の代表だからです。確かに阿嘉、慶留間は橋で繋がっていて、座間味島とは利害が一致しないことも多々ありますが。
−「都市部と違ってのぼりや街頭演説は見かけませんが、選挙活動はどのように行われているのですか?」
現職村議 私が1期目の時は街頭演説をやりましたが、ほとんどそういった選挙活動はやらないですね。地域を回って名刺を置いてもらったりするくらいで。ほとんどの人が親戚か知り合いなので、その中で票を集めるのが一般的なやり方です。
-「この村にはどんな産業に従事している人が多いのですか?」
現職村議 人口の約10%が観光業に従事しています。外部から人が来ることを嫌がる人もいますが、そのおかげで定期船がフェリー、高速船合わせて一日3往復したり、漁業にしても加工して観光客の皆さんに消費してもらうことで収入をあげられるなど、いろいろな良い影響を生み出しています。また、30%以上がIターンで移住して来た人なので、従来から住んでいた住民と分けて考えたい人とそうでない人とで考え方の違いが出てくることも多いですね。
<<古座間味ビーチは村が管理している>>
−「小さな村の議会ならではの苦労もあるのではないでしょうか。」
現職村議 台風で議会がひらけなかったある日、阿嘉島に住んでいる議長がスーツをビニール袋に入れ、頭に乗せて小さな漁船に乗って、議会の休会を宣言しに来たことがあったそうです。議会制民主主義を守るのも命がけですね。」
自然との戦いも壮絶なものがあるようで、日帰りの滞在だったが、通り雨で掲示板のポスターがあっという間に流されてしまった様子も目撃した。(晴れたらすぐに役場の職員さんが復旧していた)
<<ポスターが流されてしまった掲示板>>
大きな政党や組合、支持組織などを巻き込んで大規模に展開する選挙と異なり、有権者も立候補者も顔の見える距離にいるコミュニティでの選挙では、その度にギスギスしてしまうこともあるようだが、それぞれの考え方を改めて整理して意見を交わし合う機会として機能している様子もうかがい知ることができた。